この監督の作品見たことないかも…と思ってフィルムグラフィーを見たら、たくさん見てました。1990年代に「トータル・リコール」とか「氷の微笑」とかも見たし、最近(といっても4年前か)もイザベル・ユペールの「エル」を見たわ。なかなかケレン味のある、様式美好きでバイオレントだけど下品にならないエロスと暴力の監督、というイメージを描きながらこの映画を見てみます。1972年制作ということは、今までに見たどの映画よりもずっと昔。ルドガー・ハウアー、わりとごついけど美青年だなぁ。
なんかめちゃくちゃに女という女をひっかけまくってるけど、今や私はルドガー・ハウアーの繊細さを知っている。きっとこれだけでは終わらず、彼の深い情緒がこのあと描かれるに違いない…。
彼女は自動車事故で頭を強く打ってからだんだん正常な状態を保てなくなったのか?それとも、事故は結婚してた頃?どちらにしても、やがて赤毛のカツラも要らない状態…つまり亡くなってしまったのね。
なかなか構成がややこしい映画なんだけど、DVDに入ってる解説を見てわかったのが、この映画は彼が彼女を失ったところから始まってたということ。これは奔放なルドガー・ハウアーの映画ではなくて、愛する女を失った芸術家がさまよう映画でした。やっぱり繊細だったんだわ!ルドガー・ハウアーも、彼をアルター・エゴとして使っていると言われるヴァーホーベン監督自身も。
不思議だな、愛する人を失って喪失感でいっぱいなのに、彼女を殺す想像をするなんて。 でも、激しい性愛と暴力っていうテーマがこの監督には最初から一貫してたんだなぁ。