映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ペドロ・アルモドバル監督「オール・アバウト・マイ・マザー」2606本目

2012年にこの映画をレンタルして見たのが、アルモドバル監督との出会い。

自伝的にも見える最新作「ペイン・アンド・グローリー」を見てきたら、この作品を見直してみたくなった。

最初に見たとき、臓器移植コーディネイター(セシリア・ロスだったんだな)という仕事が映画の中心になるのかなと思ったのに、さらっと流してすぐに違う方向に行ってしまって、ついていけなくて何度も見直した。アルモドバル監督の初期の祝祭的でカラフルな世界がまだこの作品では見られます。シスター・ロサを演じるペネロペ・クルスがまだお嬢ちゃんっぽい。それに引き換え、最新作の彼女の貫禄!

この映画でもセシリア・ロスとすぐ死んじゃう繊細な息子は、強い母と弱い息子という関係で、最新作を見た後の目には、母に対する強い愛と同じくらい大きな反発を心の奥底に潜めてきたのかなという気がしてきます。

「欲望という名の電車」は、今はもう見たことがあるけど、セシリア・ロス(当時43歳かな)とマリサ・パレデス(同54歳)ではちょっと年長すぎないか?それにしても、彼女たちのあの舞台がもし見られたらきっと素晴らしいだろうな。

レンタルしたDVDにたくさん特典映像が入ってて、まだ頭が黒いアルモドバル監督が英語で長いインタビューに答えるのも見られます。主演の二人のほかに、いっぱい手術したアントニオ・サンファンのことも詳しく語ってるけど、ペネロペ・クルスは名前の順番もあとのほうだし、まだあまり詳しく語られません。ジーナ・ローランズのような憧れの女優を思わせる、と、セシリア・ロスのことを語る場面があるんだけど、インタビュアーはその後監督にカサヴェテス監督の影響について尋ねます。「オープニング・ナイト」には本当に衝撃を受けたんだって。女性をど真ん中に置いて大切に撮る、男はロクデナシしか出てこない、という共通点はありますね。

今から20年前の作品。監督の作品が全世界で広く見られるようになったきっかけの作品が。彼の背中は、まだあまり痛くなかったのかな。。。

記憶のなかのこの映画は、もうちょっとアートっぽいフランス映画みたいだったんだけど、今回見直してみて、むしろギャグが少ないだけの典型的初期~中期のアルモドバル作品でした!

オール・アバウト・マイ・マザー [DVD]

オール・アバウト・マイ・マザー [DVD]

  • 発売日: 2006/06/23
  • メディア: DVD