映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジョン・スタージェス監督「老人と海」2611本目

これもずっと見ようと思ってた作品。

キューバに行ったとき、観光コースにヘミングウェイゆかりの地がけっこうありました。彼が住んだ豪邸の各部屋に熊の毛皮や鹿の頭とかが飾ってあったして、どういう人だったのか気になってました。「老人と海」の原作は読んだけど、短いし、老人と大きな魚との綱引きにぴんとくるものはなかった。

海の上の物語というイメージだけど、冒頭は海沿いの町、陸上です。1958年のアメリカ映画なのに、ちゃんとキューバのコヒマル(ヘミングウェイゆかりの地のひとつ)で撮影してますね。(風景と人物は別に撮って合成してる?)まぎれもない私も行った要塞跡があります。要塞の前の、丸い屋根をギリシャ風の柱が支えている小高いところには今はヘミングウェイの銅像が君臨してるけど、このときはまだありません。

この映画は「老人は…」という第三者語りで進む形式が、なんというか、説明的で入り込みにくいですね。ないと映画の趣旨がわからないし、ノーベル賞受賞作品を手を加えずに映画化しようとしたんだろうけど。音楽も、老人の動きに合わせて大きく管楽器を響かせたりするのが、白黒のサスペンス映画の頃みたいで古い感じがする。今だったらどんな風に作るだろう。

老人を演じたスペンサー・トレイシーって「温厚そうに見えるが大変な自信家」と書かれていて、作家と老人を演じた役者はなんとなく通じ合うところを感じさせます。カジキとの戦いの場面とか、老人の乗った船が揺れてないので合成だと思うんだけど、確かにすごい演技力。

自分史上最大の魚を捕獲できたら、無傷で連れて帰れないことがわかっても、サメを無駄に殺しながらこうやって連れて帰るのは、老人の「男の見栄」か?男の見栄が、わかろうとしてもよくわからない私には見てもしょうがない映画なのかな。老人といっても、ヘミングウェイがこの本を書いたときまだ50代後半だけど。

彼が通った店、「テラス」とここで言われてるけどスペイン語で「ラ・テラサ」は、私が行ったときは屋根も壁もある店舗だったけど、この映画では屋根だけのオープンエアなお店だ。これも当時はこうだったんだろうか。昔いたアフリカを思い出すというけど家には剥製ばかり飾ってあって、彼にとっての動物は狩るためのものだったんじゃないかと思う。温厚で朴訥で狩猟好きってどんな人となりなんだろう。心の滓が海風で吹っ飛んでいくようなコヒマルのすがすがしい海辺でどんな風にこの人は暮らしてたんだろう。まだまだ私にはわからないことが多い…。

老人と海(1958) (字幕版)

老人と海(1958) (字幕版)

  • 発売日: 2015/03/15
  • メディア: Prime Video