映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジャ・ジャンク―監督「帰れない二人」2626本目

<ネタバレあり、かな>

監督の妻であるチャオ・タオが主役の、大河ドラマみたいにすごく長い時間の変遷を描いた映画をもう何回も見た気がします。彼女は今日も、ロクデナシに入れ込んで罪をかぶり、5年も服役した後で迎えにも来ない男を探して広大な中国を旅します。

二人が再会するのは三峡ダムに沈む予定の町。(あっちも雨が多いだろうけど、その後どうなってるんだろう、と現在のダムのことがふと心配になってしまった)

その次に彼女が向かう新疆は観光開発中の期待の土地として描かれるけど、他国の私はウイグル人迫害のニュースばかり聞いてる気がする。UFOとかインチキな話で彼女をひっかけて新疆まで連れて行ってしまうこの男もまた通りすがりか…。

最初と最後は山西省の大同。北京や上海以外の中国の都市、特にこういう内陸部って見る機会があまりないけど、かなり賑やかな大都市ですね。この町で2人はまたヤクザな世界に戻ってきますが、脳梗塞で障がいを負って戻ってきたリャオ・ファンは、もはや頼れるアニキの面影なく、居場所も見つけられずにフェイドアウト…

常に気丈でめげない女と、もろさをどんどん露呈する男。…監督がジョン・カサヴェテスに見えてきました。愛妻をモチーフにした女性礼賛映画三部作だったのかもしれません。この映画は監督の「集大成」と言われていますが、まだ50歳です。これでひとつの完結をみたのは確かだけど、次に生まれてくる映画は何かまったく新しいものになる期待感もありますね。

監督がコロナを題材にしてスマホで撮影したわずか4分弱の短編映画が、現在YouTubeで配信されています。「ジャ・ジャンクー 来訪」でググればすぐ見つかると思うのでぜひ見てみてください。長大なロケをしなくても監督の世界観がちゃんと現れていて、大河ドラマのあとに何が出てくるのか、ますます楽しみになってきます。 

帰れない二人(字幕版)

帰れない二人(字幕版)

  • 発売日: 2020/05/29
  • メディア: Prime Video