<ネタバレあり>
トム・ティクヴァといえばクラウド・アトラスだ。で、ベン・ウィショーだ。クラウド・アトラスかなり好きなんだけど、構成がイントレラブル系なので難しかった。その中でもベン・ウィショーは印象に残ってる。007のQもそうだ。彼には昆虫系の異星人みたいな不思議な違和感があって目が離せない。最後に狙われる娘の父を演じてるのはスネイプ先生こと、故アラン・リックマンですね。彼の地に足が付いた存在感はいいですね…。
この映画のしつらえは中世のパリで、気取ったかつらを付けてるけど悪臭のひどい人たちの物語だ。必要以上に醜悪さを強調したオープニング(最初からこれかぁ!)、ずっと気取った人たちが気取って演じ続ける美麗なセピア色の舞台。様式美の世界の映画なんだな。脂まみれの女の子たちをわざわざどこかに運んで放置したり、強すぎる媚薬を持ち歩いていたのに死刑台に至ってしまったり、同じ香りがその後には違う作用を及ぼしたり……これは「おとぎ話」の域の物語だったんだな。
少女はいい匂いがすると思う、確かに。幼児とも中年以上の女性とも違う。少年とも違う。そんなこともうずっと忘れてたけど、生物としての人間にはそういう美点もあったんだよなぁ。うちの猫にも独特ないい匂いがある。温もりとか柔らかい毛並みとかとも違う生の喜びだ。
でも、全然殺す必要なかったのに。赤毛の若い娘をいくらでも集めて、片っ端からラードを塗りたくって香水を作ればよかった。生きている人のほうがいい匂いがするだろうし。ジャコウジカみたいに、赤毛の若い娘には臭腺があるという話でも良かったかも。と思いました。