キューブリック監督の運転手兼パーソナル・アシスタントを30年も務めたイタリア人、エミリオ・ダレッサンドロに取材し、その手記をドキュメンタリー化したもの。
彼は在職中、なんと一度も映画を見たことはなかったのですって。将軍に使える忠実な家臣みたいに、マフィアのドンのお気に入りみたいに、滅私奉公を長年続けていたのに。あるいは、起きてる時間のほとんどがキューブリック監督で埋め尽くされていたから、短い家族との時間くらいは彼ナシで過ごしたかったのかもしれないですね。
エミリオの誠実さがにじみ出る人柄。こういう実直な片腕が、天才が天才を発揮できるようにするのに必要だったんだろうな、と思います。
キューブリックも、文字通り身を削りながら映画を作り続けたんだな。天才ってきっと、自分ですべて作り上げられる人というより、抜きんでて美しいビジョンを自分の中に持っている人んなんだと思う。それを実現するには、世界中のいろんなものや才能をかきあつめてこなければならない。だから、どんなわがままにも応えてくれる「右腕」がないといけない。
エミリオの顔はなんとなく見覚えがある気がしたけど、アイズ・ワイド・シャットで見た記憶があったのかどうかは何ともいえません。でもいい話だったな。この映画は見て良かったです、ほんと。