映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

フアン・アントニオ・バヨナ 監督「怪物はささやく」2634本目

フルネームで呼ばれる主人公、コナー・オマリー。「ドニー・ダーコ」を思い出すな。呼びやすい名前の、さいなまれている少年。ルイス・マグドゥーガルくん、素晴らしい演技力ですね。この少年の暗さもズルさも愛も憎しみも自分のものにしている。

怪物の正体は「イチイ」の木なんだ。母を演じるフェリシティ・ジョーンズは「ローグ・ワン」にも「博士と彼女のセオリー」にも出てたな、ちょっと暗い感じの美人。

不幸な子どもが非現実的な世界にあそぶ映画って、見てると胸が痛くなる。この映画は特に、タイトルを見ただけで胸がいっぱいになる。中学生の頃、母と姉が大げんかをした日の夜に私は「怪獣が飛ぶ夜」というおはなしを書いたのだ。姉が家出したあと私の部屋の窓に怪獣がやってきて、その背中に乗って町を一周して戻ってくるっていうおはなし。私がそれほど「かわいそうな子ども」だったかどうかわからないけど、空想に逃げるしかない子どもの気持ちが少しだけ思い出される。

はっ!校長先生がまたジェラルディン・チャップリンだ。「永遠の子どもたち」でも重要な役を務めてた。

この作品の少年は、さいなまれるだけではなく、生き延びて強くなる。母親にしがみつくのをやめて「行かせる」ことをまで選択する成熟を経たのだ。この監督はいったいどんな子ども時代を送ったんだろう、この人間のサガの理解の深さは。だからラテン圏の監督の作品ってやめられないんだよなぁ。。。 

怪物はささやく(字幕版)

怪物はささやく(字幕版)

  • 発売日: 2017/12/30
  • メディア: Prime Video