映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジョン・カサヴェテス監督「チャイニーズ・ブッキーを殺した男」2635本目

ジョン・カサヴェテスって、名前がギリシャ神話みたいなのに典型的なアメリカ的アメリカ人を描かせたら天下一なんだよなぁ。今じゃなくて1980年代くらいの。私が初めての海外旅行で行ったニューヨークで、ホテルを抜け出してドキドキしながら入ったデリカテッセンを思い出します。やたら大きくて高級感ないんだけど、甘いコーラに合って不思議とおいしかったっけ…。

それはさておき。ギャンブルで欲を出したばっかりにマフィアに弱みを握られて利用されるキャバレーのオーナーを演じたのは、ベン・ギャザラ。なんとなくカサヴェテス監督と似た雰囲気ですね。若干強面、やり手でちょっと色気とヤマっ気があって。 彼の出た映画はけっこう見てるけど(或る殺人、オープニングナイト、バッファロー66、ビッグリボウスキ…画像を探してやっと、そういえば出てたなぁという感じ。名脇役すぎる…。

チャイニーズ・ブッキーというのはどんな三船敏郎のような大物かと思ったら、おまけしてくれそうな中華料理店の爺さんみたいな弱そうな人でした。アメリカのあちこちにチャイナタウンはあるけど、マフィアって実際はどのくらいいるんだろう。

撃たれたコズモ(ベン・ギャザラ)は自宅でセクシーなブラックのお姉ちゃんに応急処置と痛み止めをしてもらったんでしょうか。

カサヴェテス監督の目の付けどころって、やっぱりどこかユニークなんだな。この映画では、コズモが撃たれてからあちこち行った挙句、自分の店の楽屋で今まで見たこともないような、子どもみたいな笑顔を見せる。「オープニング・ナイト」みたいに、自分にとって最高に大切な店の舞台袖で、これから幕を開けようという時間。舞台でショーの開始の遅れを詫びて、客の全員に一杯御馳走する。愛すべきショーガールたちとショーマンたち、胸躍るショー。そう悪い人生じゃなかったんじゃないか?彼はこのあと路上でこと切れたかもしれないけど…。