映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジョン・ハラス 監督「動物農場」2656本目

これもずーっと見たかった作品。ジブリが配給権を買ったほど入れ込んだからというより、SFの大御所ジョージ・オーウェル作品のうちでまだ見てなかったからかな。TSUTAYAの宅配の予約をずっと入れてたのが、やっと届きました。

ナレーションが多用されているというか、ほとんどナレーションだけでストーリーが進む、紙芝居のような映画なので、「感じる」部分が少ない。本を読んでるような感じがあります。で、悪い豚たちの顔が最初から悪役顔。教訓としては「悪に勝ったのに、自分たちの中から悪が生まれる」というふうに読み取りたいのに、「悪が別の悪に勝ってみんなをいじめた」という気持ちになります。

民主主義は社会主義とくらべて「正義」「善」なのか?という、リンゴをオレンジと比べるような議論は、キリスト教は「正義」でイスラム教は「悪」なのか、という筋の悪い議論に応用されそうで怖い。この映画はわりと怖い映画だと思う。今これを冷静に見るなら、共産主義への警鐘だけじゃなくて、「何の政権であっても民衆がだまされずに冷静に批判できる知恵をもって団結すること」っていう方向に見ないと、何かに対するアンチが強くなるばかりじゃないかな。この映画では権力を持つ豚も悪い人間も、権力に反抗する民衆動物たちも、瞳に憎しみの炎が激しく燃えてる。憎しみの映画だ。登場人物が人間の形をしていたら、めっちゃ怖いよ、きっと。こんな憎しみのアニメなんてあとにも先にもないと思うので、貴重な作品を見たという実感はあるのでした。 

動物農場 [DVD]

動物農場 [DVD]

  • 発売日: 2009/06/10
  • メディア: DVD