映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

メアリー・ハロン 監督「アメリカン・サイコ」2646本目

なにこのアメリカン・「ヤンエグ」の人たち。機内誌に載ってるような男性用化粧品を一式使ってる人って存在するんだろうか。会議の前に名刺の紙質やフォントでセンスを競う場面とか、何の虚栄の集いだと思うけど、前に外資系IT企業のはしっこに勤めてたとき、マーケティングの若い男たちが会議の前に時計の自慢をしあってたのにへきえきしてたのを思い出した。でもこの映画では、これはもしかしたらギャグなんだろうか。

クリスチャン・ベールのアクの強さが、この映画でもいい具合にムカムカします(ほめてます)。すぐに世を去らなければならない赤毛のイヤミな男は、ジャレッド・レトだったのか。真面目そうな秘書、クロエ・セヴィニーはあれだ。デッド・ドント・ダイの真面目な婦人警官だ。

自分には感情はないという彼が、犯罪で感じる快感、あるいは犯罪で発散するうっぷんは何なんだろう。何で彼は80年代のヒットチャートの曲について誰でも知ってるようなことを「Did you know?」って勿体つけて話したがるんだろう。

‥‥堰をきって泣きながら叫びだした後の彼を見てると、ああディーラーってのはものすごくストレスを内側にため込んでカッコつける商売なんだな、と思った。仕事の中身は何も語られないし、ヒマそうにしてるところしか見られないけど。

彼は殺人鬼なのか、仕事のストレスで精神に異常をきたした人なのか?

本当にこんなに連続犯罪をしていたら、どっかで「探偵」じゃなくて警察が騒ぎ出すだろう。全部か一部かはわからないけど、幻覚か妄想なんじゃないかなと思われますね…。その辺のぼかし方が、いい方向にかならずしも行ってないかんじ。こわ~~!って思って見てたはずなのに、いつの間にか、軽い気持ちで笑って終わりそうになってる。映画自体が特段目立たなくても、エンディングでしっかりショックを与えてくれる作品って絶対忘れない(13日の金曜日とか、ザ・バニシングみたいに)。この映画は、「結局なんだかわからなかったような」という気持ちで終わってしまう感覚がちょっともったいなかった気がします。クリスチャン・ベールの怪演も、ほかの俳優さんたちもとてもよかったので。 

アメリカン・サイコ(字幕版)

アメリカン・サイコ(字幕版)

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