映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アリ・アスター監督「ヘレディタリー/継承」2650本目

<ネタバレありあり>

気味が悪そうでずっと避けてたけど、だんだん「ギリギリ見られそうなもの」を見尽くしてきた感があって、とうとう手を出してしまいました。こわごわ。

「ナイブズ・アウト」で大きな芝居をする派手な女優さんだなーと思ったトニ・コレットは、むしろこれ系の映画にたくさん出てるみたいですね。ストレートで健康的な、ごく普通で元気なアメリカの奥さんって感じなところが、見る人の自然な共感をよびそうです。 もっとさかのぼると「シックス・センス」で坊やの母親の役をやってたんですね。その時の写真をググって見てみたら、さらに普通っぽい。今の彼女はめちゃくちゃジムに通ってダイエットして作り上げてるキャリア・ウーマンみたいなイメージだけど。

どんな人にも、健康に生きていたいという生理的な本能があるので、小さい子どもが突然残酷に命を奪われて路上で朽ちて行くっていうのは、何も知らずに見たら大衝撃です。この映画はその後も、なんだか怪しい、エクソシストとかローズマリーの赤ちゃんみたいな成り行きを見せていきますが、最高にトラウマになりそうなのは、悪魔さんたちだけがホッとしそうな、強烈にアンチクライストなハッピーエンディング。トラウマ映画はやっぱり、エンディングにインパクトがなければ…なんて、私も映画の見過ぎでちょっと常軌を逸してきているかもしれません…。むしろ、さっき見た「スケアリーストーリーズ」のほうが怖さでは勝っていて(私にとっては)、この映画みたいなのは工夫どころに注目しながら見てしまうのと、あまりに見づらく作ってある工作物って、不自然で作り物っぽく感じてしまうようになったからかもしれません。

この映画のポイントは、悪魔系の新しくもないテーマを扱ってるけど、昔の映画と違って祖母と母と子どもたちという普通っぽい人間ドラマがリアリティを持ちつつ、オカルトの恐怖より物理的な身体の危険や死体で恐怖をあおりつつ、最後は超不幸なのに「古き良き時代のフォークミュージック」を流す、ほのぼのとしたエンディングという新しすぎるギャグをかましてくれたところです。ホラー映画って全部コメディなんじゃないかなぁ。もしかして。

この調子で、こわごわと「ミッドサマー」も見てみるかな…。

ヘレディタリー 継承(字幕版)

ヘレディタリー 継承(字幕版)

  • 発売日: 2019/04/10
  • メディア: Prime Video