映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

伊藤峻太監督「ユートピア」2657本目

ミニシアターのクラウドファンディングの返礼ライセンスのうち1本。

インディーズ映画だけど、全体的に本気度が高いです。ハメルンの笛吹きが実際に起こった事件で、失踪した子どもの一人が現代の東京に現れて女の子を巻き込んだ闘争が始まる、という設定もグッときます。夢の国から来た人たちの衣装も、部分的に使われてるCGも、とても質が高い。音楽もドラマチックで美しい。この映画のために新しい言語(なんとなくドイツ語かロシア語みたいな)を作り上げたという没頭ぶりもすごい。それを話しながら、素人の役者さんたちがこれほど集中してしっかり演技できてるってことは、よほど監督が良い場を作ってたんだろうなと想像できます。

なのにどうしてなんとなく失速しちゃうんだろう?それは、ずっと同じくらいの緊張が続いてしまって緩急が少ないこと、たとえば普通の女の子の日常を挟み込んだりしてないこととか。あと、言語がわからないことは魅力がすごくあるけど、映画としてはある程度のわかりやすさを確保してくれるほうが、私のようなアンポンタンにはありがたいのです。日本の映画なのにちょっと集中が途切れると意味がまったくわからなくなってしまう。

あと、見た目の造形は素晴らしいんだけど、登場人物の「性格設定」がわりと薄いかもしれない。形を全部同じにしてしまったら区別がつかなくなりそうな感じ。

もう一つ贅沢をいうと、ロケの場所があんまり何か所も取れなかったのかな、CG以外の部分は室内劇っぽくなった場面も多かった。

これ、日本語吹き替え版作ってくれないかな… オーバーアクションくらいの声優さんを使って。(わりと本気)