映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

真利子哲也監督「イエローキッド」2658本目

真利子監督はもともと短編映画などを作っていたらしいけど、その後東京芸大の大学院に入って、卒業制作としてこれを作ったそうです。今までに見たこの監督の作品を振り返ってみると、「宮本から君へ」は意外と好きだったけど、だいたいいつも私にはバイオレンスすぎるのと、監督の情感にあまり共感できないという印象がありました。

でも長編デビュー作のこれは、意外と面白かったです。アメコミの「イエローキッド」の作画が素晴らしくて、いつもの監督の血なまぐさいトーンがいい具合に明るく乾いてくる。主役の重力が、柳楽優弥や池松壮亮ほど巨大じゃない分、自分の日常生活の延長として見られる。

今になって、真利子監督が北野武監督に近く思えてきました。あまり意味のないバイオレンスと、私には共感しづらい詩情という2点が共通してます。共感はしないけど、説得力がある。無意味なバイオレンスを爆発させざるを得ない人間の側面を、ていねいに描写してる。私の「好きな監督」ではないけど、ぶれない軸があって作品はどんどん深みを増してるように感じられるので、新作も多分また見ると思います。

この作品もミニシアターエイドのクラウドファンディングのオマケで見たんだけど、これって今見ようと思っても見るのが難しそうだな。実はかなり前から「見たい映画」チェックを入れてたので、こういう形で見ることができて嬉しいです。