映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

クリストファー・ノーラン監督「インセプション」2672本目

前にも見たけど、「テネット」の公開(明日からだ!)に先駆けてやたらみんな見てるので(だってIMAX上映中だから)私も見てみることにしました。家でだけど。

前に見たのはもしかしたら飛行機の機内とかだったかもしれない。あまり細かいところを覚えてない。最初に見てから10年近く経ってるんだろう。その間に私は2700本くらい映画を見て、この映画の中や外に他の映画の断片を見つける、普通の映画好きくらいの知識はついてきたかもしれません。

マリオン・コティヤールがエディット・ピアフを演じた映画を見たばかりなので、この映画のなかで繰り返し流れる「水に流して」が耳につく。監督はあの映画を見て彼女をキャスティングしたのかな。(Wikipediaを見たら、この曲を使うことはその前から決まってたそうです)「500日のサマー」でゴードン・ジョセフ・レヴィットを、「ローラーガールズ・ダイアリー」でエレン・ペイジを、「硫黄島からの手紙」~「バットマン・ビギンズ」から渡辺謙を。「バットマン・ビギンズ」からキリアン・マーフィーを(あるいはイギリスどうしなのでその前からよく知ってただろうけど)。トム・ハーディはどこから来たのかわからない。

エレン・ペイジはローラーガールズのキャラクターのままだしゴードン・ジョセフ・レヴィットもちょっと弱いキャラを継承してる。でも「借景」とは感じない、もっと大きく広げてるから。

最初の方、デカプリオとエレン・ペイジが「夢」の中で街を折りたたんで町の半分が空から折り返ってくる衝撃的な映像、よく覚えてる。郝景芳「折りたたみ北京」を読みながらこの映像を思い出したんだけど、この小説はこの映画の2010年より後の2012年に書かれたそうだから、この映画の印象が彼女にそんな小説を書かせたのかもね。

アリアドネというあまり見ない名前をググったら、迷宮から主人公を救い出すギリシャ神話の登場人物らしい。なるほど、いい名前だ。(こういうことをきっと町田氏の解説では話すんだろうなー)

そして、私の「マリオン・コティヤール=弱い女性」っていうイメージはこの映画からきてたかもしれない?

この映画そのものは「惑星ソラリス」のテーマを「エターナル・サンシャイン」の仕組みを膨らませて創造してる部分もありますね。亡き妻の思い出を追い続け、悪夢に囚われ続けるデカプリオ。そう考えるとチャーリー・カウフマンって、スタニスワフ・レムくらい斬新ですごい人なのかも(変なだけの映画もあるけどw)。

もしかしたらノーラン監督は、様々なイメージを強力に焼き付けてかき集めてアレンジする人なのかもしれない。てんこ盛りで、巨大なクロスワードパズルみたいに、複雑だけど確実に解が一つだけある。

不思議でSFで革新的なコンテンツって中国の小説とアメリカの映画が圧倒的に先に行ってるなぁ。前に見たときは不思議で難しい映画だと思ったけど、今回は複雑で面白い。全部理解できてはいないと思うし、全部理解しなくてもいいと思ってるけど、こういう映画を見たり小説を読んだりしてると頭のいろんな部分を使う。いろいろ活性化する。刺激されて気持ちが上がる。だから、これほど創意工夫をする監督や制作者のことは尊敬してしまうなぁ。 

インセプション (字幕版)

インセプション (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video