映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

グザヴィエ・ドラン監督「マティアス&マキシム」2678本目

この監督の作品はずっと公開すぐに劇場に見に来てるな。

前作の「ジョン・F・ドノヴァン」がなんとなく監督の初期の集大成というか一区切りのように思えていたので、今回は次の時代の始まりのつもりで気楽に見ることができました。

主人公たちは30歳。女は知ってるけど男に対してはシャイな初恋です。幼なじみの大好きなマットとマックスが友達の妹が撮影する短編映画に出るはめになってしまったんだけど、それは男同士でディープキスをするというもの。肝心のキスシーンは映されないけど、その後の彼らの怪しい挙動を見ているだけでどれほど動揺したかがわかります。

マックス(グザヴィエ・ドラン自身)は間もなくオーストラリアに移住してバーテンダーをやろうとしている。マットはエリートサラリーマンで美人の婚約者もいる。この二人が恋愛関係を始める気配はまだないけど、彼ら自身は気づいているし友人たちも、ひょっとすると母親たちも気づいている。

「恋のはじまり・気づき・ときめき」の映画なんだよな。彼らは知ってしまった思いを胸に、これからどんな風に生きて行くんだろうな。…という痛みの少な目な映画でした。

今回も母親はとんでもないジャンキーでした。あと、マットに赤いシャツを着せて「アルモドバル監督みたい」っていう場面が印象的でした。