映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ロマン・ポランスキー監督「赤い航路」2682本目

ポランスキーの映画にヒュー・グラントが出てる。何というありえないことだ。船のトイレで倒れていたのはやっぱり、現ポランスキー妻のエマニュエル・セニエだ。彼女がヒュー・グラントをバーのカウンターで罵倒している。おかしい…。気の利いたトークでもしてるつもりなのに寝たふりをしてみせたり。…と手練手管で惚れさせておいて、その後はポン引きのような彼女の夫が現れて、彼女との激しいなれそめを語る。ヒュー・グラントは巻き込まれ役、聞き役の無垢な青年です。

エマニュエル・セニエがとにかく迫力があってすごい。若い頃の北原三枝みたいだ。(その例えでいいのか?)SとMの使い分けの緩急はこの頃からこなしてたんですね。(cf「毛皮のヴィーナス」vs「告白小説、その結末」)

ポランスキーらしい、精神的な圧迫がたっぷり詰まった映画だけど、ヒュー・グラントがお行儀がよすぎるからか、あまりとんでもない緊張の極みまでは到達しないままでしたね。というか、初めて「ローズマリーの赤ちゃん」を見たときは胃から血が出るかと思ったけど、私も慣れてきたのか、「いつものやつだな」という感じ方になっています。

とにかくエマニュエル・セニエの生物としての全盛期が見られてよかったです。 

赤い航路 (字幕版)

赤い航路 (字幕版)

  • 発売日: 2015/08/12
  • メディア: Prime Video