映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

グレタ・ガーウィグ監督「わたしの若草物語」2692本目

(ネタバレあり)(他の映画の結末まで書いてる)

ギンレイホールでカップリングされていたもう片方の「リンドグレーン」と比べて、やっぱりハリウッド。(こっちはフィクションだという違いも大きいけど)時系列が行ったり来たりするのがわかりにくいけど、気が強くてがんばりやのジョーが作家として大成することを知っている私たちは、原作者が独身を貫いたことを知っていてもなお、ジョーが思う人と結婚したことにほっとしてしまうんですよね。その点において出版社の人の言うことはまったく正しかった。

グレタ・ガーウィグのシアーシャ・ローナンは「レディ・バード」とこの映画のキャラが被っている部分が多いこともあって、なんとなく「またか」感がありますが、4人の女子+母の賑やかにじゃれる感じの楽しさ、かわいらしさは女性監督にしか作れない親密な世界ですね。(これをソフィア・コッポラの場合全滅させちゃうんだよなー、どうしてそうなるんだろうなー)しかし全滅はしないけど、無垢で優しいベスは病気で早逝してしまいます。犠牲といっちゃ言い過ぎかもしれないけど、元気すぎる他の姉妹たちの繁栄の裏に、静かに消える命って運命何だろうか。

一方、同じく「レディ・バード」に出てるティモシー・シャラメには既視感はありません、なぜならあの映画の彼は最低男で今回は王子様だからです。ジェラール・フィリップ亡きあと(だいぶたってるけど)を継ぐ、パフスリーブの似合いすぎる男。パフスリーブではない設定だと思うけど、細さを強調するかのように袖口でたぷんたぷんと余る布切れ。そして大金持ちの御曹司という設定。多少、少年から大人に近づいてきた感じはあるけど、まだこれから男くさくなっていくのかな。楽しみです。

で、ジョーと最後に結ばれる教授、見覚えあるなーと思ってエンドクレジット見てて「あっ!」と声を上げてしまいました。「グッバイ・ゴダール」「パリの恋人たち」でめんどくさい男たちを監督・主演してた彼じゃないですか。今回はすっきりとしたいい男の役。何をもって彼をキャスティングしたんだろう、と思ったけど、俳優兼監督という意味でそもそもグレタ・ガーウィグと似てるので接点はいろいろあるんだろうなー。

あと、最後のほうの場面の自信に満ちた表情を見て、シアーシャ・ローナンって傷つきやすい美少女からすっかり強くなっていて、この先メリル・ストリープ(おばさん)の位置を継ぐ女優になるのかもなぁと思いました。