映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

マーティン・スコセッシ監督「アイリッシュマン」2706本目

これも、やっとNetflix加入したので早速見てみます。3時間半の長尺。資金もふんだんに提供され、何でも好きなものを作れ、とNetflixは言った(のではないかと想像)。一度映画館で上映しないと賞はもらえないのか?テレビ番組は映画ではないけど、BBCのテレビ映画をDVDにして日本で売ればKINENOTEに登録される。映画とそうでないものの区別をあいまいにするVOD各社がいて、小さい映写室に迫る画質のプロジェクターが家庭用にリーズナブルな価格で売られる時代。間口を広げることで、製作資金を広くかき集めやすくなるなら、映画好きとしては大歓迎です。

この映画は冒頭10分で印象に残るのはまず、古き良き時代のアメリカン・ミュージックの温かさと荒っぽさ。(音楽担当はザ・バンドのロビー・ロバートソンだ!)そしてロバート・デニーロの”若見せメイク”の出来の良さ!彼の老けメイクは何十年も前から見てるけど、若見せもけっこういけるもんですね。この技術、日本のおばちゃん向けに売ったらもうかる…と思ったけど、メイキングを見たらこれはメイクではなくて視覚効果だったんですね。(すごいけど日常生活には使えない)

内容は「ゴッドファーザー」の世界で、違いは「みんな歳を取った」に尽きる気がします。原作のある実話であるということは製作者サイドの問題で、私はこれが事実であっても作り話であっても、本当らしくて感動できれば良いです。ゴッドファーザーシリーズはまだ若い監督と俳優たちが年を重ねて行ったら…と先を想像して作ったもので、この映画はそろそろ撮るのは今が限界かなという年齢で撮られたものなので、それぞれの長く濃く深い歴史が刻み込まれてる。

仲間でない人たちや裏切った仲間をいともたやすく始末する世界には、なかなか慣れない。でもじわじわと、仲間を家族のように愛することには、若い頃よりは共感できるようになってきた気がする。つまり裏切らなければならないときの痛みに入り込めるようになってきた。それっていいことなのかな~~。

この映画の収支をWikipediaで見ると興行収入は制作費のわずかしかまかなえてないけど、一切ほかのVODやレンタルに出すことなく、名画座に降りてくることもなく、ソフト収入をすべて手にしているとなると、Netflixは収益を上げられてるんだろうな。ほんとに、映画の世界は10年後にどういう業界図になってるんだろう。。。