映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジェームズ・ヴァンダービルト 監督「ニュースの真相」2711本目

見る前に感想をたくさん読んでしまって、「結局それは誤報だったのか、それとも真実が握りつぶされたのか」という二極に分かれるんだなと思いながら見ました。

マスコミとその周辺の人々は、夢を見やすい。胸躍る映像を求める人しかその業界には近づかないから。だから真実を知りたいのにデマにすぐ飛び乗る。騙されてることに気づかず真実を追い続けてるつもりになりやすい。被害者と加害者、善と悪という二項対立を愛し、正しそうなほうに安易に肩入れする自分を肯定する。いじめっ子がいじめのニュースを見て被害者の方に肩入れするような状況をずいぶん見てきました。

一方で「忖度」って言葉はマスコミのためにあるんじゃないかというくらい、そういう彼らが上層部に行くと保身に走るのも見てきました。でも、悲しいかなそれはこの国の一般大衆の姿そのものです。

この事件、”証拠”の証拠性は疑わしいものだったというのが結論みたいだけど、兵役逃れの有無は”わからない”。普通に考えて、ズルをするときにずるい人たちが証拠を残すかというと残さないものだと思うので、タイムスタンプのしっかりした記録や写真でもない限り事実の証明って難しいんだろうなと思います。こういう事件があるとマスコミの本来の「質問しつづける」役割が委縮してしまうのはすごく残念です。

どんなスクープにも裏取りは重要。でも人間の証言は今も昔もあいまいだし買収されることもある。「どれが真実か(何を真実として扱うか)」という物差しは誰もが自分で積み上げて構築していくしかない。

ニュース番組も新聞も、もう真実を掘り下げる役目を果たせない時代だと思う。大本営の発表(「XXが〇〇と言いました」という事実)より深いことなんか速報で流せるわけないのです。ドキュメンタリー番組とか映画とかのタイムスパンでないと深い取材はできない。

メアリー・メイプスの解雇とテレビ界からの追放は、ちょっと”見せしめ”の感がありますね。その後はニュース雑誌のライターとして、さまざまな事件を追い続けていて今も現役だそうです。 

ニュースの真相(字幕版)

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  • 発売日: 2017/04/18
  • メディア: Prime Video