映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ルイス・ブニュエル監督「この庭に死す」2717本目

私の好きなブニュエル監督、まだ見てない映画が何本もあります。これもやっと回ってきました。なんか、監督らしくないな。言語がフランス語だし(監督はメキシコ人なのでスペイン語が母語)。南米でフランス領といえばフランス領ギアナだろうか。(いまも独立せずフランスの海外県)

主役の「よそ者」を演じているジョジュル・マルシャル、フランスのごつ目の二枚目といえばジャン・ギャバンみたいな存在感かな。彼が出会う娼婦を演じるのがシモーヌ・シニョレ。高そうな時計をした神父がミシェル・ピコリか。この彼は今まで見た中で一番若くてまだ28歳。聖職者らしい清潔さがあります。。。えっ彼ことしの5月に亡くなってたの!?うわーショック。。。知らなかった。。。ピコリ~・・・(涙)

娼婦とならず者と親子と牧師、ダイヤモンド鉱山を追われるところまでは、西部劇でも見ているような感じなのですが、彼らはジャングルに逃げ込んで生き延びるために蛇を狩ったり藪を歩いたり…さまよう彼らが、不思議と「逃げ惑うブルジョワジー」に見えるのは、ルイス・ブニュエル作品の見過ぎでしょうか。ジャングルでの彷徨もまた、人間性をむき出しにする舞台装置 。汚れて破れた服の彼らはもう身分も立場もありません。すっかりワイルドになったピコリがベン・アフレックに見えてきます。

そして終わり方はまた、身も蓋もなく、善人や改心した人が生き残るというわけでもなく、いろんな偶然にうまくひっかかった二人が最後に湖へとゴムボートを漕ぎだして映画は終わります。「この庭に死す」の庭って何のことだったんだろう…。

この庭に死す -デジタルリマスター版- [DVD]

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  • 発売日: 2014/12/02
  • メディア: DVD