映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

デヴィッド・グッゲンハイム監督「天才の頭の中: ビル・ゲイツを解読する」2730本目(KINENOTE未登録)

テレビドキュメンタリーと同様、監督の名前は探してもなかなか見つからないのね。(英語のWikiでやっと見つけた)これはNetflixのドキュメンタリーです。50分強×3本。このインタビュアーは誰だ?Steven Levy?彼はマイクロソフトの社員だったんじゃないか?

アメリカでWindowsとInternet Explorerの”違法”バンドル販売についての連邦訴訟がマイクロソフトに対して提起された少し後に、日本ではWordとExcelをOficeとしてPCに搭載して販売することの違法性が争われていました。その頃のマイクロソフトやビル・ゲイツはNHKでも平気で「悪の帝国」扱いしてドキュメンタリー番組で扱っていたけど、心底チーズバーガーが好きで金銭的な欲が皆無の彼は、やがて世界一のフィランソロピストとして伝記を書かれる人になると、私はいろんな人に入って回ったものでした。「世界一の大金持ちになって困っている人を助ける」は、あらゆる子どもや若者の目標であるべきだと思います。

彼の両親が地元の慈善家だったことは有名だし、メリンダというもう一人の慈善家を妻にした時点で、彼の慈善家としての次の人生がもう決まってたと思います。ほんと、いい人というかぴったりの人と結婚したと思います。

ビル・ゲイツ、センスはゼロだし、ビジネスに関しては英語を使うアメリカ人以外の「rest of the world」に対する関心度や理解が低いと思います。でも彼はヨーロッパや東アジアじゃなくて世界の最貧国のほうに興味を持ったんですね。日本語版の打てば響くような素晴らしいソフトウェアはいまひとつ作ってくれなかったけど、世界のすべての子供たちに清潔な水とトイレを使わせてあげたい、という気持ちを強くしてったんだな。いいんじゃないでしょうか。彼を守銭奴とか悪の帝王とか呼んでた人たちも、黙って10円でも100円でも募金すればいい、と思います。

やったほうがいいことを普通にやり続ける。やらない人たちが何を言ってきても。

Part 2で、ビルがウォーレン・バフェットに初めて会ったのが彼の母親の勧めだったって言ってて、これはびっくりしました。大金持ちになる前の話だったんだ。

Part 3では、財団が原子力をもっと安全に利用する方法を開発していることが語られます。「えっ!」と思ったけど、こういう、ショックや悲しみに影響されず長い目でものを考えるのが、欧米というかユダヤの強さなのかなという気もしてきました。冷静にものを見ているつもりでも、原子力には爆弾や発電所の大事故の印象が強すぎて「絶対撤廃」以外考えられないと思っていたけど、実は撤廃するにも、使用済み燃料の処分は埋めたままでいいのか?例えばそこに大地震が起こったり隕石がぶつかったりしたら、核融合が再び起こって世界は滅亡するかもしれない、という問題が残ってる。少なくとも「使用済み核燃料の安全な処分」はこの先ずっと研究し続けるべきなんですよね。営利企業がやると株主にも一般イメージにもマイナスになる恐れがあるので、ビル&メリンダ財団が研究し続けてくれるのは、人類にとってありがたいことなんじゃないかと思います。

莫大なお金を様々な、人類に必要だけど誰もやりたがらない研究開発に使い続けることは、アメリカだけじゃなく世界中にソフトウェアを売って莫大な利益をあげた企業主としての使命感もあるのかもしれません。財団の困難な研究がいくつかでも、大成功を収めることを願っています。