映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ビリー・ワイルダー監督「異国の出来事」2749本目

(ネタバレあり)

1948年、マレーネ・ディートリッヒ御年47歳のときの作品。彼女の恋敵である女性議員を演じるのはジーン・アーサー48歳。昔からけっこうシニアな女性の恋愛映画って作られてたんだなぁ。

監督はビリー・ワイルダー。マレーネ・ディートリッヒと共に、第二次大戦前にベルリンで過ごしていたことが知られています。冒頭に出てくる、構造体だけが残ってあとは全部焼き尽くされたベルリンの町の空撮は、ワイルダー監督自身が懐かしい町が心配で、見に行きたかったんじゃないのかな。撮影のためと言えば入国する理由もつく。ディートリッヒの場面は米国内ロケか、それともドイツに行ったのか。この頃にベルリンに戻って母に会ったという記述がWikipediaにあったので、ロケに同行したのかもしれません。

この映画はあるアメリカ人将校と愛人(ドイツ人、ディートリッヒ)、アメリカ女性議員(ジーン・アーサー)の三角関係が中心にあるのですが、本命はディートリッヒで女性議員は彼女への調査を妨害するために便宜的に好きなふりをしてるだけ。そこに、ディートリッヒが戦時中に付き合っていたナチスの元将校が現れて、浮気された復讐を遂げようとします。…ディートリッヒが女の意地悪な性を演じていてうまい。アイオワ州の共和党員を演じるのはジーン・アーサー。いつもガチガチに編み込んだ頭(靴ひもを編み込んだの?とディートリッヒがイヤミを言うし)とグレースーツですが、将校に迫られるといともたやすく落ちてしまい、女性らしさが開花します。思い込んだら一直線、エンディングまで彼を追って突っ走ります。(おそらく彼は逃げおおせられまい、という雰囲気)

ビリー・ワイルダー作品なので、それぞれの人の中ののずるさや思い込みや弱さがくっきりと浮かび上がってきて面白かったです。

異国の出来事 [DVD]

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  • 発売日: 2007/07/25
  • メディア: DVD