映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

レイ・ミューラー監督「レニ」2758本目

これもずっと見たかったんだー。ドイツの監督の作品は、今見るのが難しいものが多くて、少しずつ見つけたら見るようにしてるんだけど、レニ・リーフェンシュタールの映画はなかなか見つけられず、「民族の祭典」だけDVDを購入して見ました。

90歳にしてまだ若い頃の面影があり、かくしゃくと歩き回るしよくしゃべる。2003年に101歳で亡くなったそうですが、あっぱれな大往生ですよね。

映画に関わるようになったばかりの若い彼女は、雪山でも険しい岩山でも出かけていく。美しくはつらつとして強いゲルマン系の女性の象徴みたいです。どんな批判にさらされても、撮りたい映画を撮ろうとし続ける。このくじけない強さ、イギリスの同僚の女性にもこういう人いたなぁ。

彼女は本質的に映像制作者だったんだな。彼女の撮る映像は、ワイルドでドラマチックで堂々としてる。その中に可憐で凛とした彼女がいる。この姿はヒトラーの理想と確かに一致してるように見える。彼女は「撮りたいものを自分の思うように撮りたい」だけの職人のような人だった。「2時間の演説を5分にするには、演説の最初と最後と、一番盛り上がった部分だけ残してあとは削る」と言っていて、おそらく現在のドキュメンタリーでも10人中9人の編集者が同じことをすると思う。「いい絵が撮りたい」。今撮影や編集や監督をしてる人たちも、制作の勉強のためにこの人の映画を見てる人ってけっこういるんじゃないかな。

レニは戦後に生まれてたら、ドキュメンタリーが作られるようなファッションデザイナーかアーティストになった気がする。多分、アクが強くてわりと敵も多いタイプ。でも圧倒的な美的感覚で、どんな批評にもくじけない。…そんな一生の方が幸せだったかも、なんて、言う必要はないんだろうな、あの時代を生きたあとちゃんと101歳まで長生きしたんだから。生きたもの勝ち、なのかもなぁ。 

レニ

レニ

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