映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

菅原和彦監督「ベニシアさんの四季の庭」2761本目

ベニシアさんはNHKの生活番組で知られたイギリス人女性で、1971年から日本に住んで、長いこと京都の大原で素敵なハーブ・ガーデンをやっています。それを映画にしたというのは?と思ったら、テレビ番組では取り上げない彼女の生家(貴族の生まれで家はマナー・ハウスと呼ばれる豪華なお屋敷)の映像もあったり、年間を通じて季節ごとの植物との関わりを集めたりしていて、こういうのをひとまとめにするのか、なるほど、と思いました。「リトル・フォレスト」の映画を見てるのと似たような気持ちになりますね。「日々是好日」とか「モリのいる場所」とか。

私は植物より動物の方が得意な人間だし、大学進学以来ずっと東京に住んで忙しくしてきたけど、そろそろ店じまいをして落ち着く場所を探そうとしてます。だからこういう映画は真剣に見てしまう。

しかしあれだな…若い頃の彼女にもし出会ってたら、なんかインドから日本に流れてきた欧米人バックパッカーって思ったかもしれない。実際すごく流れ流れてる人だ。言葉は常に感覚的で第六感が判断基準。

でも京都に落ち着いてから、もう40年以上たっている。すごいな。根っこがどこにあるのかよくわからない私でも、いつかどこかに根を生やすことができるんだろうか。

なぜか、ベニシアさんの結婚の話や、登山家の夫がほかの女性を好きになったときの家族の危機とかも盛り込んでるのですが、この辺はNHKテレビでは一切触れられていなかったことだろうな。 美しい庭は、ほんとうはずーっとひらひら楽しく暮らしてきた家族の庭ではなくて、苦悩や涙やどろどろの感情をたくさん蔵した庭なのだ。

ベニシアさんの四季の庭 [DVD]

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  • 発売日: 2014/05/28
  • メディア: DVD