映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ビリー・ワイルダー監督「地獄の英雄」2803本目

邦題は「地獄の英雄」、原題はKINENOTEでは「The Big Carnival」となっているけど映画では「Ace in the Hole」となっています。特ダネのために事故の解決を遅らせる不良記者の話だから、英雄でもカーニバルでもなく、ポーカーの切り札が穴の中に閉じ込められている、というタイトルが合ってますね。

「サンセット大通り」みたいな、悪いやつが案の定自分で堀った落とし穴に落ちるイヤ~な物語。この映画の中で起こる事故は、家族まで来ているのに報道規制が敷かれるどころか悪徳記者が場を仕切って、人命が最後の最後になっているという、とんでもない状況。今はおそらく世界中にかなりの部分で、同様の失敗を数々重ねたあとで、人命最優先の徹底が図られてるはずなので、この映画は古き「悪き」時代の物語として見ればいいのかもしれませんが。

マスコミ攻撃だけに終わる人もいると思うけど、自分たちの物見遊山の好奇心が1000人、10000人、と積み重なって、多くの人が求めるものを視聴率順に機械的に提供しているだけのプラットフォームがマスコミだから、マスコミがなくなればまた違う口コミやら新しいメディアやらが出てきたり、自分で車を出して見に行くこの映画のような人たちが大勢結集するだけ。おおもとはどんな人にもある「珍しいものを見たい気持ち」だからね。それをみんな少しずつ抑えて、被害者を助けるのを最優先にしましょうっていうことを改めて胸に刻みたいです。

カーク・ダグラス演じる野心の塊のような記者が、最後の最後まであがく生きざまというか死にざまは、徹底していて、ある意味あっぱれでした。

地獄の英雄 [DVD]

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  • 発売日: 2007/12/25
  • メディア: DVD