映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

フランシス・ワトリー監督「デヴィッド・ボウイ 最後の5年間/最初の5年間」2812-2813本目(KINENOTE未掲載)

Amazonプライム限定ドキュメンタリー、デヴィッド・ボウイの最初の5年間と最後の5年間を取り上げた2本立てです。(最初の5年間のほうは監督のクレジットなし)

公開は「最後」が2019年、「最初」が2016年という順番だけど、やっぱりここは時系列順に見たいです。

ジギー・スターダストが大ヒットして「スター」になる前、「スペース・オディティ」や「世界を撃った男」…より前、いろんなバンドを組んではレコードを出して片っ端から失敗してた頃、”下手な”パントマイムをやってみたり、人気歌手にそっくりの歌い方をしてみたり、奇をてらってもうまくいかない時代の彼について、当時の恋人たちや音楽のパートナーたちが語ります。

愛されてたけど妙な奴だった、って感じ。

一方の「最後の5年間」はもう結末を知ってるから切なくて、シリアスな気持ちで見るしかないです。最後のツアーの途中で倒れて、その後何年も音楽活動から遠ざかっていたのが、突然「The Net Day」という大傑作で復活。そのときのレコーディング・メンバーが、その時に作った音を再現して鳴らしてくれるのが感激。

「★」が出た時はさらに嬉しかったけど、「The Next Day」を超えるものができるのか?と思ったのと、このシーケンスは「Double Fantasy」と「Milk & Honey」に似ていてやばい。実際恐れた通りになってしまいましたが…。

それにしてもこの2枚は人知を超えてるんじゃないかというほど素晴らしくて、ボウイって昔からすごいけどとうとうモノリスが彼の前に現れたかと思いました。「★」で演奏をしたジャズマンたち、MVを作ったすごいアーティストたちのインタビューも見られた。トニー・ヴィスコンティがまるで年を取ってなくて元気なのもよかった。

すごい人は死ぬ前にここまで上りつめられるのか。残される私たちのために、ここまでのことを伝えられる人がいるのか。と思ったものでした。聞き直すのがもったいない、持ってるだけでいいと思える最後の2枚のアルバムでした。

デヴィッド・ボウイ 最初の5年間(字幕版)

デヴィッド・ボウイ 最初の5年間(字幕版)

  • 発売日: 2020/02/17
  • メディア: Prime Video