映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

増村保造 監督「からっ風野郎」2858本目

<ネタバレあり>

増村監督が、三島由紀夫原作を映画化するのに飽き足りず、彼を主役に1本撮ってしまいました。…いや違うな。「潮騒」や「炎上」はこの前だけど、これより後に映画化された作品も多い。「黒蜥蜴」、「憂国」、「音楽」…。他の作家の文学作品も多数映画化してるけど、中でも三島由紀夫は群を抜いて多い。よっぽど惚れ込んでた、というわけじゃなくて東大の同級生だったのかぁ…。(この作品は三島由紀夫原作ではなくて菊島隆三と安藤日出男のオリジナル脚本みたいです。)

三島由紀夫の小説、最近あらためて何冊か読んでるんだけど、天才でありながら人目が気になってたまらず、実力があふれてるのに虚栄心の塊みたいな書き手の心情が面白いんですよ。ヤクザ映画の主役を張って、大勢の人に囲まれてド派手に階段落ちして死ぬというのは彼には最高の気分だったんじゃないだろうか?(エスカレーター、しかも上りだけど)小柄だけど細マッチョで顔が大きく、視線もしっかりしていて映画負けしてません。うまくはないけど、何も知らずに見たら面白い役者だと思ったかも。声が少しハスキーでちゃんと通るのも良い。しかし彼と対峙すると若尾文子のうまさが際立つな…。

この作品は1960年の制作。石原慎太郎だって1965年前後に何本か自分で映画に出演してたし、若者文化って作り手と演じ手がオーバーラップすることが多いから、不思議ではないっちゃない。

でもこの顔立ちとたたずまい、彼にはサムライ姿が似合いそうだな。時代劇にも出たのかな。四十七士とかぴったりな気がする…。 

からっ風野郎

からっ風野郎

  • 発売日: 2015/09/21
  • メディア: Prime Video