映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

城定秀夫 監督「アルプススタンドのはしの方」2863本目

ゆるーい感じで本音トークが続くような、まったりと見られる映画かなと思って借りたんだけど、なんか文化祭で意識高い演劇部の奴らがやってる自作脚本の劇を見てるような見づらさが湧きあがってきたぞ…。昔の作品だけど「桜の園」はそういう演劇部っぽさを中心に据えた作品。あれは、少女たちがその年齢の力を注ぎぎって演じてるのがすごく清々しかったけど、この映画はなんともいえず痛い。何がそんな違うんだろう。

あと「桐島、部活やめたってよ」で描かれた”スクールカースト”だとか空気だとかも、この映画を満たしている。あの映画も苦手だったなぁ。

多分自主制作っぽく低予算でがんばって作った映画なんだろうな。セリフのある出演者のほかは、野球場の使用料と、エキストラのブラスバンドの子たちだけだし。

ダラッダラ汗かいて、やたらと真っ黒に日焼けするのが甲子園、なんとなく呑まれるような熱気、野球興味なくてもなんとなく母校を応援しちゃうのが甲子園。うるささや汗臭さの設定が弱いから、彼らが巻き込まれるまでに時間がかかっちゃうのかな。

実際のところ、子どもはみんなスターとかテストで一番になることのような、わかりやすい栄光から理解するわけで、バイプレーヤーの渋さとか、中年になってからわかればいいことだ。ハンバーグとかカレーのおいしさを知ってから30年後にあたりめとかカラスミの旨味がわかればいい。高校生の頃って、がんばるのってイケてないし、熱血な大人はウザいって感じるのが普通で、大人に共感できるようになる奴は相当ませてるのだ。この映画は、NHKの「中学生日記」ならわりといいドラマだと思えるのかもしれない。つまり、この作品から中高年が何か普遍的な人間性を学ぼうとか思ってはいけないのだ!

2020年のキネマ旬報ベストテンに入った邦画を見るのは、なんとこれが初めて。去年のうちに1本たりとも見てないなんて、映画好きとは名乗れませんね~。

アルプススタンドのはしの方 Blu-ray(初回限定生産)

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  • 発売日: 2021/01/20
  • メディア: Blu-ray