ニュースを読んで回るというだけの仕事が成り立ってたんだ?「忙しくて新聞を読む暇もないでしょうから」と前口上を言ってたけど、新聞が高すぎたり、文字が読めない人が多かったりするという事情がなければ成立しないだろうと思う。
そんな商売をしているジェファーソン(トム・ハンクス)が、先住民に誘拐されて連れまわされていたドイツ人の少女を保護する。彼女は家へ連れて帰る途中で引率の者が襲われてしまい、身動きが取れなくなっていた。もうドイツ語もほとんど覚えていない、英語は元々わからない、先住民の言葉が彼女の言葉だ。ジェファーソンは彼女を役場に預けて連れ帰ってもらおうとするが、役人は不在で3か月戻らないというので、自分で彼女を連れて行くことにする。
少女を売り飛ばそうとする男に撃たれそうになったり、先住民狩りで名を上げた男の一団に出会ったり。彼らが先住民をやっつけたというニュースを読むのを拒むとまた撃たれそうになる。少女は果敢にジェファーソンを援護射撃する。
<以下ネタバレあり>
少女を無事に家族(といっても父母や姉妹は全員亡くなっていて、叔母夫妻で労働をすることになる)に送り届けたあと、ジェファーソンも自分の町に戻るんだけど、妻は自分が戦争に行っていた間にコレラで亡くなっていた。それを知っていたのでジェファーソンは戦争が終わってからもすぐに戻らず、「ニュース読み」をしながら旅を続けていたのだ。自分の町にも居場所はなく、少女を訪ねてみると鎖でつながれていた。二人はまた「ニュース読み」の旅に出る。
「ニュース読み」というのは、時事漫談みたいなものなんだな。効果音のお手伝いをする少女の明るい表情。彼女はどうやら養女になったらしい。孤独なものどうしの二人は旅を続ける。。。
なかなか茫漠たる物語なんですよね。ハッピーエンドっぽいけど、ほとんどの人がほとんどのものを失くしている。仕方なく二人で旅を続けているわけで、その茫漠ぶりはタル・ベーラ作品のちょっと手前くらいです。この邦題はなかなか見事だと思います。
そして、見て良かった!というカタルシスが足りない。いい映画だとは思うんだけど。この監督はどこへ向かってるんだろうな。エンタメじゃないな。ドキュメンタリーには限定しないだろうけど、きっと戦争とか愛の不毛とかをこれからも描き続けるんだと思います。この映画に関していうとNetflixだし、なんとなく大掛かりで喜びの大きい映画をつい期待してしまったけど、今後さらに茫漠とした作品をきわめて、人の心を大きく揺さぶってくれる気がするので、楽しみにしたいです。