映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

荻上直子監督「めがね」 2889本目

8年前に一度見てるけど、その後この映画の舞台になった与論島に行って、撮影が行われたヨロン島ビレッジに泊まったので、振り返り再見してみます。

映画が作られたのは2007年、今から14年も前。やたらとのんびりした映画なんだけど、1990年代に作られた「パイナップルツアーズ」や「ナビィの恋」みたいに、島の生活を多少リアルに描いたものと違って、この映画は完全フィクションというか私がよく使う言葉だけど”おとぎ話”なんですよね。「かもめ食堂」もそうだけど、都会で疲れた女性たちが、実際に島を訪れるというより、島で現実離れした生活を送る夢をみる感じ。

この映画のなかで多用される「たそがれるのが得意」というのに根本的に違和感があるのは、「たそがれる」にはネガティブな感じしかしないから。疲れをいやしに来て魂が喜んでいる、という感じがないのがおかしい、ここまで美しい海にいるのに。だから、本当はそこにはいない、追い立てられながら仕事をしてる本体が別の町にいる感じがする。2000年代はそんな時代だったのかな。今はみんなが家にいて、島でのんびりすることがリアルな憧れと思えないくらい遠く感じられてる。こういう映画を見ると、当時の自分のことも思い出されてくるわけですよね。

与論島って一番高いところでも100mに満たない、まっ平で小さい珊瑚の島で、白い砂を透かしたびっくりするくらいきれいな海が、悪人の心も溶かしそうなところでした。

ビレッジの犬「ケン」は男みたいな名前だけどメスで、ちょっと前までその孫の「マーゴ」という犬が看板犬をやってたけど寿命がきてしまって、今は犬がいないそうです。

めがね

めがね

  • 発売日: 2016/06/29
  • メディア: Prime Video