映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

マーヴィン・ルロイ監督「若草物語」2903本目

テレビ放送を見逃して、探してみたらU-Nextにあったので見てみました。

原題「Little Women」には、幼いけどもう大人の女性、という意味を込めて父親が呼んだものだけど、純粋でみずみずしい印象の「若草物語」という邦題にはそのニュアンスがありません。この邦題は日本語訳のタイトルから来てるんだと思うけど、どうも室町時代の日本文学に「若草物語」ってのがあるらしく、(そっちは「若草」さんが出てくる)そのタイトルを仮借したんだろうな。…なんか毎回タイトルにばっかり興味もっちゃってますが。

原作は全4巻もあって、「大草原の小さな家」みたいな、壮大な家族史なんですよね。「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」でシアーシャ・ローナンが演じた作者のアバター、ジョーはここではジューン・アリソン。こっちの方がキャラクター通りだなぁ。明るく賢く素直だけど、弱みを見せない感じで…。すぐ嫁ぐ姉メグ(エマ・ワトソンがやったやつ)はここではジャネット・リー。フローレンス・ピューが鼻っ柱強く演じたメグは、ここでは髪を金髪にしたエリザベス・テイラー。みるみる美しくなっていって、これではどんな男性も惚れるよなぁ…。ティモシー・シャラメが王子様然と演じたローリーは、ここでは男っぽいピーター・ローフォード。1949年のアメリカのプリンス・チャーミングはマッチョでなければならなかったんだろうな、きっと。性格的には優しくてデリケートなんだけど。

やっぱり、グレタ・ガーウィグ版のほうがストーリーがよく頭に入る…ひとりひとりの気持ちの動きが、手に取るようにわかるからだと思う。嫉妬、見栄、欲、といった誰にでもある感情を、愛情と同じようにストレートに表出させているのに、すべての登場人物に共感を感じさせてくれました。女性の感情のひだを描くのは、(男性だとどうしても遠慮や理想があるから)女性監督がうまい気がするな…。

比較ばっかりになっちゃいましたが、こちらもよい作品でした。見られてよかった。