映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ペドロ・アルモドバル監督「マタドール<闘牛士> 炎のレクイエム」2904本目

ペドロ・アルモドバル監督初期の、ちょっと暗くて重めタイプの作品。監督の作品には死はわりとつきものなんだけど、同じように作品につきもののユーモアは控えめ、というか、あまりありません。(といっても、死に暗さが全然ないのはいつもと同じ)

ショーの演出家は監督自身かな?喋り方もシリアスなのでアルモドバルっぽくないんだけどなぁ。よく見ると、精神科医?の役でカルメン・マウラも出てますね。

アントニオ・バンデラス演じるアンヘルはゲイか?その年で女を知らないのか、とバカにされて、近所の女性をレイプする(実は未遂)。警察で彼はなぜかそれ以外の殺人も自白するんだけど、本当の犯人は別に存在する。彼はトランス状態になると殺人の場面を透視してしまう”霊能力者”だった、ということらしい。アンヘル、天使という名の彼は透き通った目で真実を見通す役割。

絶頂に達するために相手を殺すっていう、なかなか猟奇的な映画なんだけど、どこかあっさりしてるのがアルモドバル的。彼の映画には常に”終わることのない愛”があると思う(母から子、子から母だったりするけど)ので、それもひとつの愛を極めた形っていうことなのかもしれません。