映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジェフ・オーロースキー監督「監視資本主義 デジタル社会がもたらす光と影」2908本目(KINENOTE未掲載)

Netflixの見ごたえのあるオリジナルドキュメンタリーシリーズをまた1つ見ました。

興味深いテーマ。Google、Twitter、Facebook、Instagram、などの今をときめく巨大テック企業を辞めた人たちが登場して、簡単には言えないけど「正しいことをやっていると思えなくなって」辞めた彼らの事情をひもといていきます。

Netflixって映像系の会社の中では断トツこういったテック系からの転職が多い会社で、回線の安定性とかユーザビリティの良さ、リコメンドの正確さは彼らに負っている部分が大きいと聞いてます。作ったのも共通の人たちだし、ユーザーのデータを吸い上げていることに関しても、ひとごとのように描いてる場合じゃないよね?(一応書いといた)

私も巨大テック企業で16年も働いた人間だけど、まだネットの弊害や情報漏洩の問題は注目されないくらい小さい時代だったので、彼らと同じ「もやもや」や「不安」を持つには至らなかった。問題はネットで起こってるってことなんだろうな。

お金を払って見るテレビと、タダで見られるテレビは違うように、お金を払って使うサービスと、タダで使えるサービスは違う。タダより高いものなんてあるわけない。いつから人はそんなこともわからないようになったんだろう?大人がはまって、子どもたちに教えることもなくなったってことかな。

ウェブ検索や自動翻訳が本当に役立つものへと完成度を高められたのは、無料だから使う人たちの膨大なデータのおかげだ。自分が与えるものと得るもの、相手が掠め取るものと提供するもの。すべてはつながっていて、すべてが天秤の上で平衡を示してる。…だから、倫理観がありそうな会社のサービスに対してより強い信頼感を持つべきで、そういう目をもってサービスを監視したり選んだりするべきなんだよな。

でも世の中の99%の人はデジタルサービスを会社の倫理性で選ぶ知識がない。多分。

歴史的に、新しい商売は法律の抜け穴を抜けて始めて大もうけして、ある日取り締まる法律ができてそれが違法とされる。世の中の分断が進んでいるのは実感だけど、SNSがなかったら分断は「ここまでは」進んでない、のかもしれない。

人間はおそろしく騙されやすい。騙すことによって利益を得ようと思ってはいけない。っていうのが本当は最低限の倫理なんだけどな…。