映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ピレ・アウグスト監督「マンデラの名もなき看守」2913本目

ビレ・アウグストがこういう映画(社会派、っていうの?)も作ってたんだ。

ネルソン・マンデラがらみの映画はいくつか見たけど、管理者側の作品は初めて。もう、人間はいい人と悪い人に分かれるっていう考えは止めるしかないのだ。上に立つ人がいると、恨みを貯める人が出てきて、恨みはすべての争いと正当化の根源になる。最初はマンデラに厳しく当たっていた看守も、マンデラの徹底した公正さと自由・平等の信念に影響を受け始める。その変化は1:1の個人的なものだけではなくて、アメリカの公民権運動がかなり遅れて南アにやっと到達するまでの世の中の変化でもある。

レイフ・ファインズに対する弟ジョセフ・ファインズの存在感って、ベン・アフレックに対するケイシー・アフレックに近いような(まったくの私見)。兄たちはアクも押し出しも強いけど弟たちは控えめな人柄が光る役柄で地味ながら名作を主演している(cf.マンチェスター・バイ・ザ・シー)。この映画ではぴったりのはまり役です。まじめで正義感が強い。だから”法を執行する仕事をしている”(cf.「リチャード・ジュエル」の映画の中でのせりふ)。まじめだから白人たちの正義を正しいことだと信じ切ってるけど、純粋ゆえに現実から目を背けられない。この看守ですら最初は「マンデラを死刑にすべきだ。恐るべきテロリストだ」という。私は生まれてこのかた、マンデラは南アのヒーローだ。そういうところで育ったから。でも彼の団体はテロを行って民間人も殺してたのは事実らしい。「嫌いな人には何をやってもいい」と思い込んでいる哀しい人たちが、そこにも、ここにも、大勢いる。革命のヒーローって本当にヒーローなのかな。

(看守の奥さん、いつもオシャレだよなぁ。ノースリーブのワンピースが多いけど、そんなに南アって暑かったっけ)

マンデラの名もなき看守 (字幕版)

マンデラの名もなき看守 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video