映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ルキノ・ヴィスコンティ監督「夏の嵐」2926本目

ヴィスコンティ監督の作品は「美学」というしかないような監督の美意識がムンムンしてる。宝塚なみの濃さ。

アリダ・ヴァリは「かくも長き不在」を見てしまったので情念の女のイメージが強いんだけど、こんなに若い頃から、むせ返るような一方的な情愛で画面から湯気が出るほど熱く感じられます。すごいなぁ。一途なんだろうなぁ。(役柄だけど)視線が強すぎて鉄でも焼き切ってくれそう。(いつまで言ってる)

それに引き換え、彼女をひっかける若いチャラ男(ファーリー・グレンジャー。口パクだなと思ったらアメリカ人だ)。ちょっと可愛いような女好きする雰囲気があるけど、最初からまったく彼女に気がないのが、映画で見てる私たちにはわかるのに、彼女にはまったくわからない。あ~あ、あなたの純情はこんなクズに捧げちゃダメよ~~(思い入れてしまうくらいの熱い演技)

彼の本命の若い女、ラウラ(リナ・モレリ)がまた印象派の絵画みたいにキレイ。アリダ・ヴァリもまだ33歳なんだけど、少女みたいなこの子と比べられるのはちょっと辛い。さっさと逃げ出せばいいのにその場に居残って傷に自ら唐辛子を塗りこむ。傷口から火が吹きそうです。その思いが復讐へと向かうのは当然。

なんとなく、イタリアの映画なのに源氏物語とか連想してしまいました。愛憎の果てだからかな…。しかし脱走兵って問答無用の銃殺なんだ。このクズ野郎にはふさわしい最期だ…。あんまりひどい役なので、地元イタリアでは演じたがる俳優がいなかったからアメリカから呼んだのかな…。

とにかくアリダ・ヴァリすごかったです。