映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジュリアン・テンプル監督「LONDON CALLING ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー」2931本目

私はピストルズとかダムドみたいな頭の悪そうなパンク・ロッカーが好きだったので、政治色の強いクラッシュは「へん!」だったのですが、フジロック第一回(1997年開催)を聴きに来日して、2日目が台風で中止になったら富士急ハイランドでジェットコースターに乗ってたという話(来てたのは事実)を聞いてちょっと好感を持った記憶があります。

それから5年後だったのか、亡くなったのは。長生きしそうなイメージだったのですごく驚きました。ああ、彼は伝説になってしまった。

でも昔はMTVもなかったしこんなドキュメンタリーを作る人もいなかったので、ロッキン・オンをまあまあちゃんと読んでても彼くらいメジャーなアーティストの生い立ちを知ることすらありませんでした。ほんと貴重、こういうドキュメンタリーって。(数珠つなぎ的にどんどん見ちゃってキリがないので、ある程度で止めて次に進もうとしてるんです、これでも)

外交官の息子でインテリで押し出しとカリスマ性が強くて。…私の嫌いなタイプなんだよな(笑) でも「I fought the law」とかバンドの練習のすきまによくやってたな(コード進行が簡単だから)(その後私が法務部に所属することになるとは、誰も知らない10代の頃のことである)

ジョー・ストラマーは…カリスマ性を持とうと思って生まれてきたわけじゃない。大したことを言ってなくても(あるいは、真理だけど他の人たとえばミック・ジョーンズが言っても誰も聞かなかったことを言っても)、観衆が狂喜してついてくるんだ。そして彼自身、彼のカリスマに取り込まれてしまう。自分の思想の芯が強いわけじゃなくてアンテナを張ってる方の人だから、壊れるときはあっという間。クラッシュが解散してもミックはBADをやれたけど、ジョーはさまようしかなかったんじゃないかな。自分を守る柱も壁も持てなかった。先天的な心臓の欠陥は、ほかの原因で亡くなるまで発見されなかったかもしれないし、ほかの致命的な欠陥もあったかもしれないけど、結局は決められた時間が終わったってことなんだろうと思います。

パンクの人じゃないみたいなドラマチックな人だった。