映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ウィリアム・ワイラー監督「コレクター」2937本目

<ネタバレ、ありといえば、あり>

テレンス・スタンプって最近「ねじれた家」や「プリシラ」を見たばかりだけど、前に見た若い頃の「遥か群衆を離れて」のプレイボーイの軍曹のイメージも強くて(美形で悪い男)、最初から彼のワルっぷりをちょっと期待して見てみました。

悪いやつというより怖いやつ、いかれてるやつですね。でも純粋さも感じられて、清潔感がある。…それはまだ一人目に立ち向かっているときの彼だから。理想の女性を求めて、彼はこのあと二人目、三人目、と延々と誘拐を繰り返して、もう庭に埋める地面がなくなった頃にボロを出して捕まる頃には、すっかり鬼の形相になっていることでしょう。…などとその先を妄想してしまうくらい、はまり役だったと思います。

ウイリアム・ワイラーはどうしてこんな作品を撮ったんでしょうね。これ以外はすべてロマンチック、あるいは勇壮な、親子でも学校でも見られるような健全な作品みたいなのに。それに、これしか撮ってないのにずいぶんよくできた作品でした。テレンス・スタンプの、正常と異常のスレスレのところを縫うような演技も、誘拐されたサマンサ・エッガーのごく普通の女子大生っぽさも良かったです。