映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

レミー・ベルヴォー/アンドレ・ボンゼル/ブノワ・ポールヴールド監督「ありふれた事件」 2941本目

万引きくらいのノリで殺人を繰り返す殺人犯の密着ドキュメンタリーを撮ろうと撮影クルーが常に同行している。殺人犯は常に普通に朗らかで、カメラに向かって偉そうにいつも自説をぶっている。これは1992年の作品だけど、今ならきっと殺人を投稿するYouTuberのお話になるんだろうな。マスコミが、とか、テレビが、とか言う人たちは、若い子はほとんどテレビなんて持たなくなった今も、刺激を求める側、つまり「私たち」がマスコミやYouTubeを求め続けて、生み出し続けてるってことにもう気づいたんだろうか。マスコミもYouTubeも諸悪の根源だけど、いろんな詐欺と同じように、今あるのを全部禁止しても雨後の筍のようにどんどん湧いてくるのだ。手っ取り早い楽しみや儲け話を求め続けるから。良い番組やコンテンツだけを自分のために選んでる人たちは、そんなふうにひとくくりにして「xxが悪い」みたいな言い方はしないよ。

「アイデア一発」ものとしてよくできていて、映画学校の卒業制作として若くて才気あふれる制作者たちが作ったと言われて納得です。主役を演じたブノワ・ポールブールドは「ココ・アヴァン・シャネル」ではココの愛人となる将校を演じてたらしい。(あとの二人はその後名前が出てこないなぁ)

この映画は、やられる側がちっとも怖がってないので、あんまり怖くないです。映画学校の子たちが楽しくてたまらないという顔をして撮ってるから。なんとなく、彼ら自身はミヒャエル・ハネケを理想としたのかなという気がするけど、彼の映画の骨の髄まで冷たくなるような恐ろしさは全然ないので、安心?して見られます。最後彼ら自身皆殺しで、勧善懲悪という世の中のルールも守られてるし…。

ありふれた事件 [DVD]

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  • 発売日: 2014/05/02
  • メディア: DVD