原題の「All the President’s Men」って「オールザキングスメン」の応用だな。みんな揃って口をつぐんでる。ウォーターゲート事件は発生が1972年、ニクソンの辞任が1974年8月なので、この映画が作られた1976年はまだ興奮冷めやらぬ時期ですね。何というか、社会勉強のためにこの映画は見たほうがいい。新聞を購読するくらい社会に関心のある人ならみんな。
なんでかというと、選挙ってこういう情報合戦で、この頃はまだ牧歌的に電話やら家の訪問やらで取材したり情報収集をしてたということは、今はほとんどの調査も取材もネット上で行われてるんだろうな、と類推できたりするから。
ダスティン・ホフマンがいいですね。粘り強く好奇心と正義感が強くて。彼も狡猾なんだけど、ロバート・レッドフォードがさらにうまくやる。現実のボブ&カールはこんな凸凹コンビではなく、似た雰囲気の事務員っぽい外見だったみたいだけど。
アメリカのいいところは、大統領のスパイ行為は「ある」、告発されなかったものも含めてあるんだけど、告発に市民がちゃんとそれに意識を向ける。意義があるから報道される。自浄作用が、十分かどうかは別にして働いているということが重要。日本が国として自浄作用を持てないなら、欧米式民主主義社会は日本には早かったんじゃないか…。なんとなく、やくざとかの悪に対する親近感があったり、その一方で政府高官の懐に入る機会があったら喜んで入るみたいな不公正に対する無関心とかも。あるいは、宗教観の違いか…キリスト教でも仏教でも地獄に落ちないよう善行を積む人はいるか。何が違うんだろう。正義が勝たなければならないと信じてる人の割合??
いろいろ考えてしまいましたが、生々しくて見ごたえのある良い映画でした。