映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

大林宣彦監督「海辺の映画館」2942本目

予想はしてたけど、これは、ものすごくコンテクストが重要な作品だな。あの大林宣彦監督の、よりによって最後の作品。ということをほぼ全員知った上で見て評価してるわけだけど、全く知らずにこれを見たとき、どのように私は楽しめるだろうか?

わりあい最近「ハウス」「麗猫伝説」「花筐」を見た(コンテクストを踏まえた)私としては、 ああ大林監督って面白い人だなぁ、極彩色でいろどられた古民家で魑魅魍魎と人間とみんなで囲炉裏を囲んで酒を酌み交わすような、全然枯れてないイマジネーション。バラエティに富むキャスティングは「好きな人みんなを呼んでみた」んだろうな。ファンタ爺の高橋幸宏の唐突さは意外と気にならず、伊藤歩を見るのは久しぶりだけど、やっぱりキレイだなぁ。

これは大林監督のあの世へ行く直前の「走馬灯(のように脳裏をかけめぐる思い出)」か。(Wikipediaを見たら常盤貴子もそう言ってたらしい)

認知症予備軍のお年寄りのお話を聞くボランティアをやってたとき、彼らがつらつらと語るランダムな思い出やビジョンは、言葉になってくる部分だけだとこじんまりと感じられてたけど、もしかしたら頭の中にはカラフルでにぎやかでエネルギーあふれる世界が広がってたのかも、という気がしてきてなんだか愉快になる。どんな一人の人間にも、映画一本分以上の世界が詰まってるのかも。

ストーリーを構築して反戦の思いをファンタジーとして昇華、なんてまどろっこしいことはしない。もともと、起承転結の納得のいくストーリーを重視してなかったのかも。「ハウス」も「麗猫」もそんな映画だった。それがまた面白かった。ここまでランダムなものをランダムなままごちゃっとまとめて、面白いと思わせるのはマジックなんだろうなぁ。

皆さんどんな感想を書いてるんだろう…。これから読ませていただきます。

海辺の映画館ーキネマの玉手箱

海辺の映画館ーキネマの玉手箱

  • 発売日: 2021/02/15
  • メディア: Prime Video