映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジェームズ・アイヴォリー監督「モーリス」2960本目

今日のE.M.フォースター特集、最後の作品。原作は、作者の死後に出版された禁断の小説です。

といっても愛に目覚めた相手と共に生きようとするのか、それとも世間的に自分にふさわしい相手を受け入れるか?という命題は共通してるようにも思えます。相手の奔放さに恋をして、自分の中の隠れていた部分が現れてしまったときに、一生それを隠していくのかどうか。この作品では二人の結末が分かれます。

改めて思うのは、英文学とか純文学とかいうと何か高尚なもののようだけど、結局のところ惚れたはれた、なんだな。それが人間だから普遍性が生じる。マンガやアニメと同じで、いいものも悪いものもある。世界中の難しそうな小説をもっと読んでみようかなと思えるのは、文字よりわかりやすい映像の力もあるんだろうな。

演じた人たちについていうと、「ハワーズ・エンド」ではウィルコックス家の資本主義者の「兄」をやってたジェームズ・ウィルビーはヒュー・グラントに思いを拒まれて、「眺めのいい部屋」でヒロインの弟だったフレディ青年の愛を受け入れると。(入り組んでいる)

マーチャント氏がもう映画を作れないのは残念だけど、ジェームズ・アイヴォリー翁が今も「君の名前で僕を呼んで」のような素晴らしく美麗な映画を作り続けていることが嬉しくなります。さらに次の作品も見られたらいいな…。