映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

イングマール・ベルイマン監督「沈黙」2980本目

2013年に初めて見たベルイマン監督作品かな、確か。そのときはまったく入って行けず苦労したのですが、その後メジャーなベルイマン作品を何本も見たので、改めて見直してみます。

最初見たときは、なんともいえずむせ返るような圧迫感があって、息苦しかったのを、再度見ながら完全に思い出しました。なんでこれほど圧迫感があるかというと、寄りすがちなカメラ、うだるような表情の妹アナ(グンネル・リンドブロム)、もだけど、台詞、BGMはおろか効果音もない「無音」の時間の長さですかね。「沈黙」は言葉が通じないことを直接的には意味したのかもしれないけど。他の作品もそうだけど、鏡に映った鏡像もしつこく使われますね。「こびとサーカス」の非日常性も、興味より不安をあおります。

姉は無音の部屋に臥せって、執事のようなホテル従業員になんとか用事を伝えようとするけど、不自由ばかりでフラストレーションにさいなまれる。何かの病気らしいけど、どこが悪いのかさっぱりわからなくて、ますます映画は難しくなっていく。

妹(男の子の母)は言葉の通じないカフェで、言葉の要らないコミュニケーションの末、地元の男をホテルに連れ込む。

真面目で優秀な姉に罰のように与えられる沈黙と、言葉があってもなくても泳ぐように世を渡っていく妹の対決。厳格な親と子供のようでもあるけど、あまりにリアリティのない設定なので、一人の女の中の2つの相反する人格のせめぎあいのようにも感じられます。

 

で、「厳格」のほうが滅びる。でも勝った「奔放」のほうも、引き続き暑さでむせかえりながら列車に揺られているだけ。

象徴的すぎて、なにかわかったかと聞かれても「さっぱり」としか答えられないのは2回見ても同じです。「あーそうそう」とか「だよね~」とか、共感理解できた人っているんだろうか。すごくよく知られて見られてる作品だけど、そんじょそこらの難解な作品よりずっとよくわからない作品でした…。