映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

セリーヌ・シアマ 監督「燃ゆる女の肖像」3008本目

やっとVODに降りてきた。フランス映画なのね。

先生を取り囲んで、キャンバスに彼女を描いている少女たち。教室の後ろに、暗くて美しい海の絵が見える。…この様式的で端正な美しさ、萩尾望都とかの時代の日本の少女マンガみたいですね。同性どうしで出会って恋に落ちる相手って、自分が黒髪なら相手はブロンド、という「自分にない美しさ」に惹かれるパターンをよく見るけど、これもそうです。お嬢様は知的ですこし奔放で、どこか野性的な美少女。浜辺にいたり、ハープシコードに向かっている二人の姿は、印象派の絵みたいです。「ピアノ・レッスン」の画面を思い出すな。

ドレス自体はみんなすごくシンプルで、四角いえりぐりから白いレースが覗いている同じデザインの無地のサテンの赤、緑、紺、などなど。

お嬢様は、「午後8時の訪問者」のヒロインのアデル・エネルだったのか。この家は、母親がいても女所帯だけど、画家とお嬢様とメイドの3人だけの5日間の暮らしが、なんともしずかに華やいでて、ずっとこの生活が続けばいいのにと思ってしまう。 メイドが刺しゅうする花びんの野花が素朴。

北欧とかアイルランドとかのような、無表情な美しさがあるけど、監督はイタリア系のフランス人なんだなぁ。

最後の、絵で語り、静かに泣き笑うっていう恋愛がすばらしく美しいですね。いままで映像で描かれたことがない愛情を描いた素晴らしい作品でした。

燃ゆる女の肖像(字幕版)