映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

大島渚監督「悦楽」3030本目

大島渚が作るような作品って監督自身のわだかまりをぶつけたような感じで、今はそういうのをまんがにしたものが多いような気がする。この映画が作られた1965年当時のまんがは、大人向けは仁侠ものとか侍ものとかポルノとか、子ども向けは青春スポーツもの全盛で、こういう内容をまんがにする人や、こういうまんがを載せる雑誌や、そういう雑誌の発行部数とかが少なかったから、まんがへ向かわなかった潜在的アーティストが多かったんじゃないかなぁと思います。(その中で「ガロ」とかに書き続けた人たちは偉い)(この映画は原作があるので、私は山田風太郎について書いてるのかもしれないけど)

昭和って時代は、人が「人間の心の中にあるものって、ないがしろにされてるけど、本当はすごく大事なんじゃないか」って思った時代なのかな。内省的、妄想的な作品が多くて不思議というか面白いです。共感の対極、興味深いという感じ。

この映画の主人公は、学生の頃から女性に対する欲望と妄想でひたすら悶々とし続ける人生を送ってる。逮捕よりもっとひどい結末もありうるけど、ギリギリ、現実的にありそうなところに落ちつけてるのかな。恐喝者が複数出てくるところにリアリティがすでにないけど、これが当時のリアリティなのかな…。