映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

マイク・ニコルズ監督「バージニア・ウルフなんかこわくない」3040本目

「卒業」や「シルクウッド」のマイク・ニコルズ監督。この作品のタイトルは何度も耳にしたことがあったけど、どういう内容なんだろうってずっと思ってました。なぜならヴァージニア・ウルフというのは英文科の授業で習った「stream of consciousness」の、フェミニストの女流英国作家で、なんでこの人のことを怖がったり怖がらなかったりするのか全然見当もつかないから。

ネットを見ると「ピーターと狼」のウルフとヴァージニア・ウルフをかけた替え歌、という説明がありますね。しかし作品を見ていると、学長の娘である妻に一生コケにされ続けている助教授が「なにがフェミニズムだ、女がでかい顔をして。なにがバーにニア・ウルフだ」と心で叫んでるのかなーと思ってしまったりしますね。

それにしても、面白いくらいの罵倒夫婦。のちの「おとなのけんか」や「おとなの事情」みたいな、夫婦の恥部をえぐりあう系の作品に通じるともいえるし、昔からの舞台劇の流れをくんでいるともいえそうです。

エリザベス・テイラーという「グラマーかつ知的で欠点を見つけるのが難しい美女」がここまで崩れるというか家にいるような自然さ…もしやと思ったら相手役のリチャード・バートンと、このとき夫婦ですね。(その後離婚したけどまた結婚した唯一の相手)普段の家庭内のストレスを映画にぶつけて、スッキリしてないかこの二人?

イジメややっかみに関する本を最近読んでるので、最初から太刀打ちできない妻(学長がバックについてる上に常に罵倒する、そして自分は万年助教授)に対して夫がブチ切れてライフルを発射するのは人間の心情からするとありそうなことだけど、傘だった(オチ)。

夫婦げんかって、中身はどうでもいいのに不思議と面白い…言い合う二人の声のトーンとか言葉遣いとかで、二人のほんとうの関係性が聞こえてくるというか。みんな泥酔してるから、言動はムチャクチャだけど、芯の熱さとかは伝わってくる。

気乗りのしないお付き合いの飲み会で、ヤケになって飲みすぎることがたまーにある。それでいつになく心を開いてしまって、思いもよらない長い付き合いの友達ができたりもする。この4人はその後、家族同然の付き合いをしていくのかも。

私は人と仲良くなるのが難しいほうだし、この映画の良さを説明できないけど。こんな夫婦でも離婚するんだなぁ(あ、それはプライベートか)。