映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ケビン・コスナー監督「ダンス・ウィズ・ウルブズ」3041本目

これ見ないまま今に至ってました。今みると、美しいおとぎ話かなと、ぱっと見で感じてしまう…それくらいアメリカの分断ムードは定着してる。この映画が公開された1990年はバブルがはじける前、心にも懐にも余裕があって、今まで長年犠牲にしてきたものへ、申し訳なさを感じる余裕もあった。

とにかくアメリカ合衆国は広い。先住民居留地はアリゾナのナバホ・ネイションしか知らなかったけど、大陸の真ん中のサウス・ダコタにも、今もぽつぽつと居留地があるんだな。(この映画の舞台となった時代は、ヨーロッパの人たちが占領してない土地は全部”居留地”というか彼らの土地だったわけだ)

悪い意味ではなくて、ほんとに「ポカホンタス」とか「モアナ」とかを実写でやってる感じだなぁ。ただ、どっちにも完全には所属できない二人は、二人という新しい世界を生き抜くしかないし、この後のスー族の苦境から目を離してはいけないと、映画は締めくくる。

ふと思った。分断が進んだのは、こういう作品が今は見られていないからじゃなくて、たくさんの人がこの映画も見たし、いろんな階級の人たちのことも知ってしまったから、賛同する人と「それどころじゃないんだよ、私たちのほうがよっぽど大変なんだよ!」っていう人に分かれたんだ。豊かな生活をしてる人たちと、長年苦境のままの自分たちを比べてしまうっていう不幸。知ることには副作用もあるけど、目を見開いて、探求心を持ち続けないと、人を操作しようとする人たちに利用されてしまう。

それにしても、私は歳を重ねるにつれて。こういう荒涼とした風景に向かう気持ちがどんどん強くなるな。