映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

武正晴監督「アンダードッグ 前編」3042本目

(前編)監督は「百円の恋」の武正晴。脚本は負け犬をリアルに描かせたらいま多分日本一の、「喜劇・愛妻物語」の足立紳(百円の恋も)。まず、ボクシングの場面がとてもリアルでいいです。森山未來の反射神経すごいけど、勝地涼のファイティングスピリットもいい。後楽園ホールの、リングサイドにいると汗や血の匂いまでしてくるような痛々しさが、切実に伝わってきますね。

リング外の彼らのしょうもない日常もいい。みんなトレーナーや職場や女たちに支えてもらって、なんとかヒーローの振りを続けていられる。

制作者たちが、心底「かませ犬」たちのことを、そのまま、何も強調したり偽ったりしなくても、今のままがいいって思ってるのがわかる。なんともいえず愛のある映画だ。女たちの描き方が画一的(みんな優しい、やらせてくれて文句ひとつ言わない、水川あさみ以外は)なのは、脚本家、いや制作陣がみんな「こんな女がいいよなぁ~」って思ってる理想の女たちなんだろう。という意味でとっても男たちの映画なのでした。