映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ビリー・ワイルダー監督「熱砂の秘密」3123本目

こんな昔の作品にもレビューが14個もついてるのが、日本の映画愛好家層の厚さじゃないかなぁ。レビュアーの先輩のみなさまに感謝です。

さてビリー・ワイルダー、このタイトルは監督っぽくない気がしてしまう。原題は「Five Graves to Cairo」、カイロへの5つの墓?アガサ・クリスティ原作か何か?ではなくてラヨス・ビロ、またはラホス・ビヨという人の戯曲でした。かなり映画化されてるけど見た人の数は全部合わせて100人もいないかも…Wikipediaにちゃんと項目があって、この人もビリー・ワイルダーも、この作品では俳優として出演してるエリッヒ・フォン・シュトロハイムもみんなオーストリア=ハンガリー帝国の出身だ。ラホスさんは第二次大戦前後のスパイ映画の原作多数なので、リアリティを期待します。

で作品ですが、風紋も美しい砂漠をキャタピラー転がして戦車が進んでいく…が、上半身を出している男は意識がない。中の男たちもみんな死んでいるかのようだ。戦車が傾いて、1人が意識を取り戻した…排気が逆流して一酸化炭素中毒になったみたい。早くもかなり墓が作れそうな気配ですが、生き残りは戦車から振り落とされて、自力で辛くも石造りの英国ホテルにたどり着きます。なんかモロッコっぽいけど、エジプトに入国したところらしい。イギリス残兵の彼は熱に浮かされてうわごとつぶやくばかり…彼をホテルの支配人と女性使用人(これがアン・バクスター)が助けようとするところに、ドイツ軍がやってきてそこに駐留を始めてしまう。アン・バクスター、普通のアメリカ人なのにフランス人ふうのたどたどしい英語うまいな。主役のフランチョット・トーンというイギリスの俳優は「戦艦バウンティ号の叛乱」に出てたのか。

そしてエリッヒ・フォン・シュトラウム登場。強面中の強面だけど、わざと怖い顔をしてるような表情豊かなところが、なんともじわじわ来ます。彼に限らず、俳優たちの圧というか存在感すごい…。フランチョット・トーンも目力がすごいんだよな。モロッコ風いでたちの支配人を演じたエイキム・タミロフはロシアの人らしい。…そういわれてみれば「キンザザ」に出てたような風貌。

墓は4つで彼が生き残ったという状態のところ、タイトルは「5つの墓」。最後の墓に入るのは誰か?

正体を察知したドイツ中尉との暗闇での駆け引き、すごいスリル。地図のトリックもシンプルだけど利いてます。そして最後の墓に入るのは、まさかの…。

最後に切なさも残る、大変よくできた作品でした。こういうのに出会えるから、昔の映画をあさるのはやめられません!

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