映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アン・リー監督「恋人たちの食卓」3134本目

冒頭の中華の達人の調理のようすは、食べたくなるというよりただ見ていたくなるほど、見事。そこまでしなくても、というくらい手をかけて美しさも味のうちと考えるのが中華料理なのかな。原題は「飲食男女」…邦題もこのままで良かったかも?「恋人たちの食卓」は内容に合ってるけど、それじゃ「Eat, pray, love」、キャメロン・ディアスが主演のラブコメかと思ってしまう。(それにしても邦題のツッコミばっかりやってるな私)

アン・リーって奇跡的に英語圏でも中華圏でも違和感のない氏名だけど、英語圏だとしたら女性監督になりそうだ。「ブロークバック・マウンテン」の自然の雄大さ、その中での愛の偉大さにまいってしまった私でしたが、この「飲食男女」の監督が10年後にあの映画を撮るなんて、まだ何もその片鱗が見つけられません。強いていえば、尋常じゃない美的感覚、でしょうか。

1994年の台湾女性たちは、当時の日本のファッションがバブリーだったのに比べてシンプルな美しさ。1990年頃はまだパンチパーマみたいなおばちゃんもたくさんいたけど、2000年くらいになると渋谷や原宿とファッションや髪型、メイクが変わらなくなっていて、その時期の変化がすごく大きかったのを覚えてます。この映画は過渡期かもしれないけど、メイクは見事なのに服装がなんともやぼったいなぁ…(人のこと言えないけど)。

この映画でもう一つ印象的なのは、いろんなラテン音楽がバックに使われていること。みんな長袖とかスーツとか着てるけど、台湾って暑いので、なんとなーく合う気もする。

で内容ですが、家族がみんな恋愛真っ最中で、老父までまさかの恋愛発覚、そしてキャリアウーマンだけが置いて行かれる、という…ああ痛い。身につまされるようなストーリーですわ…。でも、味覚障害に陥るくらい内心悩んでいたパパの味覚が戻ってきてよかったね。(それが結論)