映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ピエル・パオロ・パゾリーニ 監督「アポロンの地獄」3147本目

この監督の作品は初めてかな。

ギリシャ神話のお話なのに、現代的なアパートの一室で始まり…母を演じてるのはアリダ・ヴァリでした。イタリア映画って重厚なものが多い気がする。イタリアに行くと街中の彫刻とか建物とかがびっくりするほど大きいのも、イタリア的な文化とか気質なのかな。音楽は、どう聞いても日本の横笛や太鼓の音だ。環太平洋あちこちの先住民が慣らしていた「ムックリ」の音も。、インドネシアの「ケチャ」も、ギリシャ(のはずだけどアルジェリアか何かのような)の町に流れていても違和感はない。(自分にとって聞きなれた音だからだろうな)。でもそれより、場面場面のつなぎ方がおそろしく不自然だな…。各場面は絵画みたいに独立して完成しているけど、すべてが説明的だ。文字によって創造されたものを広げるというより狭い範囲で立体化したような。脚本家から監督になったことが関係あるのかな、いや新藤兼人や濱口竜介の作品には最初から映像をイメージして書いていただろうとしか思えない広がりがあるし、詩人から監督になった園子温も立体世界の人だから、そこは説明にはならないな…。

パラジャーノフとかホドロフスキーにもそういう特徴があったように思うけど、映像に衝撃があるので、紙芝居のように納得して見ていた気がする。

主人公、彼を捨てに行った男、王の従者だった者、母、みんな苦悩にうちひしがれる。テーマが重いので彼らの深刻さも納得できたけど、もう少し滑らかに映画の世界に浸れたらよかったなぁ、なんて勝手なことを言って恐縮です。。。